※本記事の内容は執筆時(令和4年7月上旬)の情報を基に作成しております。
はじめに
長期優良住宅認定制度は、2009年(平成21年)6月4日より施行されております。
“長期にわたり良好な状態で使用するための措置が講じられた優良な住宅”
の建築・維持保全に関する計画を、「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」に基づき認定するものです。
スクラップ&ビルドといった言葉に代表されるような、
10数年での建替えを前提とした家の在り方ではなく、
数十年に及び快適に住み続けられる住宅性能の指標となっております。
現在では長期優良住宅化リフォーム推進事業も開始されていますが、
この記事では戸建て新築住宅に限ってお話ししたいと思います。
長期優良住宅の認定状況
制度開始以来、長期優良住宅の認定戸数は年間10万戸程度で推移しております。
しかし近年、新築住宅戸数における長期優良住宅の割合は増加傾向にあります。
令和に入るとおよそ4戸の内1戸は長期優良住宅の認定を受けております。
また、令和3年度においての認定戸数は約12万戸、割合は27.7%と急上昇しています。
これは長期優良住宅の認定を受けることで得られるメリットが
大きくなってきたことが関わっていると考えられます。(後述)
長期優良住宅の認定基準
長期優良住宅の認定を受ける為には主として以下の措置を講じ、
必要書類を添えて所管行政庁に申請することが必要となります。
①長期に使用する為の構造及び設備を有していること
②居住環境等への配慮を行なっていること
③一定面積以上の住戸面積を有していること
④維持保全の期間・方法を定めていること
⑤自然災害への配慮を行なっていること
この内、①の長期使用構造に関しては以下の基準が定められています。
劣化対策
認定基準:数世代にわたり住宅の構造躯体が使用できる
劣化対策等級3相当に加え、床下・小屋裏点検口や
床下有効空間の確保に関して追加措置を必要とします。
耐震性
認定基準:耐震性能が高く、地震の振動に耐えられる
耐震等級2~3が必要となります。
ただし、令和4年10月より壁量基準の見直しが検討されており、以降は耐震等級3が必須となる見込みです。
維持管理・更新の容易性
認定基準:構造躯体に比べて耐用年数が短い内装・設備について維持管理を容易に行なうことができる
コンクリート内に専用配管を埋設したり、
地中埋設管上にコンクリートを打設したりすると維持管理が困難となる為NGです。
その他、配管の接合部や形状について基準が定められています。
省エネルギー性
認定基準:断熱性を高めることで暖冷房負荷を軽減することができる
断熱等性能等級4が求められており、躯体・壁等の部位や開口部における
断熱性能が地域区分ごとに定められた基準値をクリアする必要があります。
★断熱性についての詳しい内容はこちらの記事をご覧くださいね。
住宅の断熱性と気密性
READ MOREまた、省エネルギー性に関しては令和4年4月に日本住宅性能表示基準が
改正されたことを受け、令和4年10月よりZEH(※)基準である
断熱等性能等級5・一次エネルギー消費量等級6の両方が必須となる見込みです。
断熱等性能等級についてはZEH基準よりも上の6及び7も創設され、
今後国として省エネ住宅を推進していくにあたり様々な制度に絡んでくる可能性があります。
(※)ZEH(ゼッチ):ネット・ゼロ・エネルギー・ハウスの略
長期優良住宅のメリット
以上のように認定基準が厳格に定められている長期優良住宅。
数世代をまたいで長期にわたり住み続けることを前提としている
認定制度であるため、資産価値が下がりにくいという特徴があります。
また、他にもこの認定を受けることで得られるメリットには次のようなものがあります。
住宅ローン減税(控除)の特例措置
令和4年及び令和5年内に入居する新築住宅に関しては、
ローン減税の対象となる借入限度額が、
省エネ基準に適合しない住宅より2,000万円引き上げとなります。
また、住宅ローン減税が延長された令和7年末の入居まで
控除期間:13年×控除率:0.7 %が維持されます(一般住宅は10年)。
★住宅ローン減税についての詳しい内容はこちらの記事をご覧くださいね。
【2022年度版】住宅ローン控除制度の行方②
READ MORE登録免許税の軽減措置
住宅を新築した際に所有権保存登記というものを実施しますが、
長期優良住宅の税率は一般住宅の税率の2/3に軽減されてます。
したがって、登記に掛かる費用がその分安くなります。
・一般住宅:0.15 %
・長期優良住宅:0.1%
※こちらの軽減措置は、現段階で令和6年3月31日までの入居が対象となっています。
不動産取得税の特例措置
住宅を建てた際に課せられる不動産取得税についても、
長期優良住宅の認定を受けると控除額が優遇されます。
・一般住宅:(固定資産税評価額-1,200万円)×3 %
・長期優良住宅:(固定資産税評価額-1,300万円)×3 %
通常の標準課税額からの控除額が+100万円されているので、
納税額について最大で3万円の差異が出てきます。
※固定資産税評価額の算出方法については省略します。
※こちらの軽減措置は、現段階で令和6年3月31日までの入居が対象となっています。
固定資産税の減額期間延長
住宅や土地に掛かる固定資産税。
(固定資産税評価額)×1.4 %の税額ですが、新築住宅ではこれが1/2に減額されます。
ただし、一般住宅と長期優良住宅とでその減額期間に差が出てきます。
・一般住宅:3年間
・長期優良住宅:5年間
※固定資産税評価額の算出方法については省略します。
※こちらの軽減措置は、現段階で令和6年3月31日までの入居が対象となっています。
地震保険の割引
地震保険には住宅の耐震等級による割引が設定されており、
長期優良住宅=耐震等級2~3においては30 %~50 %の割引率となります。
先述のとおり令和4年10月から壁量基準が見直されると、
長期優良住宅=耐震等級3→50 %割引となります。
補助金・融資制度での優遇
長期優良住宅は先述の認定基準にもあるように、
省エネ性能に関して充分な性能を有しているという証明になります。
したがって、国として省エネ住宅を推進していくという方針に則り、
補助金制度に関して補助金額等で優遇措置が得られるケースが多いです。
また、長期固定金利型の住宅ローンであるフラット35についても
ワンランク上のフラット35Sを利用でき、さらに借入金利の優遇措置が受けられます。
例①)こどもみらい住宅支援事業
・省エネ基準に適合する住宅:60万円
・長期優良住宅:80万円
例②)地域型住宅グリーン化事業
・中小工務店が整備する木造の認定長期優良住宅:限度額140万円
例③)フラット35S
・金利Aプラン:借入金利より当初10年間0.25 %引き下げ
長期優良住宅のデメリット
では、長期優良住宅の認定を受けることで起きるデメリットとは何でしょうか?
具体的に以下のようなポイントが挙げられます。
①コストが掛かる
長期優良住宅仕様にする為に、建築会社によっては標準仕様よりも
かなりグレードアップしなければならない場合があります。
尚、様々な設計図書類の作成や手続きにより申請料が掛かります。
②時間が掛かる
長期優良住宅の申請手続きには1カ月~2カ月程要する為、
着工のタイミングが遅くなる傾向があります。
今後、申請手続きの様式が見直されることで短縮されるかもしれませんが、
現状ではこのくらい時間が掛かるものと考えていいでしょう。
③性能を維持する必要がある
認定基準にある「維持保全」を遵守していくにあたり、
定期点検や補修・メンテナンスを継続し住宅の状態を維持していく義務があります。
通常は申請時の維持保全計画に沿って実施していれば問題ありません。
おわりに
新築戸建て住宅として、現代の主流となりつつある
長期優良住宅についてお話しさせていただきました。
ファイブホームでは長期優良住宅仕様を標準とし、
施主様のご要望に応じて申請を代行させていただいております。
一生に一度のマイホームですので、長期優良住宅の
メリットとデメリットをしっかり把握した上でご依頼いただければと思います。
制度や仕様に関する不明点などありましたら、是非お気軽にお問い合わせくださいね。
この記事を書いた人
ファイブホーム 編集者