はじめに
SNSを筆頭に、最近ではデザインに特化した
“魅せる”階段も多くなってきました。
しかし、大切なのはデザイン×住みやすさの両立です。
今回は階段の種類やサイズ感について触れていきましょう。
階段の形状による分類
階段の種類は設置される場所により、
屋外階段・屋内階段・共用階段(集合住宅)に分類されます。
(それぞれに対して勾配や寸法に建築基準法による規定があります)
また、階段を真上から見下ろした時の平面的な形状で分類すると
次のようなものに分けられます。
直階段
直(ちょく)階段は、下階から上階まで一直線の階段です。
階段下スペースが大きく空く為、オープンな階段にすると
スタイリッシュな印象になり、より一層開放感が感じられるでしょう。
一方で直線距離が大きくなる為、空間を上手に利用する工夫が必要です。
また、これを真半分に折り曲げた形のものを「折り返し階段」と呼び、
学校や公共施設の各フロアの行き来に多く使用されています。
曲がり階段
曲がり階段は途中で昇降方向が変わる階段です。
間取りにより下階や上階、あるいはその両方付近等で曲げる場合があります。
一般的に最も汎用的でかつ応用が利くタイプになります。
曲がり部分に踊り場を設けると安全性が増す他、
スキップフロアのようにちょっとした滞在スペースとして利用することもできます。
ただし、踊り場や階段下収納等を設ける場合は立体的なサイズ感にも配慮が必要です。
螺旋階段・回り階段
螺旋(らせん)階段・回り階段は扇状の段板(踏板)を使用し、
円あるいは円弧を描くような昇降をする階段です。
平面的には最もコンパクトにできる上、デザイン性も高いのが特徴です。
一方で、大きな弧を描く回り階段でない限りは中心部に近いほど踏面が狭くなる為、
踏み外しのリスクが高く、また荷物の運搬が困難な場合があります。
階段の上り下りしやすさ
勾配に関わる寸法
階段の上り下りのしやすさに関わるポイントが勾配です。
上の画像に階段の構成に関わる名称をまとめました。
段板(だんいた)、蹴込(けこみ)、踏面(ふみづら)、蹴上(けあげ)、段鼻(だんばな)
など聞きなれない言葉が並んでいますが、全部覚える必要はありません。
写真はちょうど建築中の現場で、階段の側面である側板(がわいた)だけ付いている状態です。
この中で勾配の参考になる要素が
「蹴上(けあげ):R」と「踏面(ふみづら):T」で、
昇降しやすい寸法の目安は
2R+T=63 (cm)
という式で表されます。
※回り階段・螺旋階段の踏面は狭いほうから30 cmの位置で計測します。
この2つの寸法については建築基準法で規定があり、
学校や商業施設・住宅などにより各々異なります。
戸建住宅においては蹴上(R)≦23 (cm)、踏面(T)≧15 (cm)ですが、
こちらの水準ギリギリですと勾配は約57°にもなります。
上記の式に準えて例えば蹴上(R)=20 cm、踏面(T)=23 cmとすると勾配は約41°に落ち着きます。
この程度で昇降には全く問題がありませんが、近年では老後を考えて
より負担の少ない30~35°にまで抑える場合も見受けられます。
この場合は上記の式を「2R+T=60 (cm)」とすると良いでしょう。
例)蹴上(R)=17.5 cm、踏面(T)=25 cm → 勾配:35°
注意点としては、勾配が緩やかになればなるほど上階に達するための
段数が増えたり、階段スペース自体も大きく必要になるということです。
せっかくの生活スペースやデザインを損なわないよう、
間取りとのバランスを見て検討していきましょう。
バリアフリー性能に関わる基準
先述の階段勾配は、
バリアフリー性に関する基準
(高齢者等配慮対策等級3)
についても関係があります。
上記の画像のように、階段勾配についても
細かく数値が指定されています。
高齢者等配慮対策等級3を取得するためには
他にも居室の段差等に配慮が必要ですが、
これらの基準をクリアすることで
一部の補助金等で補助額の加算が
受けられる場合があります。
手摺
階段に欠かせない要素の一つが手摺(てすり)ですね。
法規でも安全性の観点から階段スペースには手摺が義務付けられています。
手摺の寸法については法規上の規制はありませんが、
段の先端(段鼻:だんばな)より75~85 cm程度が使用しやすいです。
手摺の壁からの出幅は、手摺がしっかりと握られれば問題ありません。
間取りのプランニングにはあまり関わりが無いとは思いますが、
出幅が10 cm以下であれば法規上の階段有効幅への影響もありません。
おわりに
今回は階段について形状からの分類と、基本的な寸法についてお話ししました。
この他、材料別の分類や支持方法による分類等、まだまだ奥が深いものです。
日々の生活の中で常に行き来する階段だからこそ、
デザインと使いやすさの両面からしっかりと考えていきたいですね。
この記事を書いた人
ファイブホーム 編集者